桜の咲く頃 ~君に~


「家ないとかありえないから。」


ほんとのこと言えよ。っていわれても


ほんとのことなんて言えない。


私の肩にするりと傘が掛けられる。


高校生は私の正面に立って顔を覗き込ませる。


「ん?言ってみ?」


そんな甘くいわれったって…。


「大丈夫だよ?」


そう言いながら私に向かって手を伸ばす。


そっと頭に触れられて雨で濡れた髪をすくう。


久しぶりに人に触られた気がした。


でも


全く嫌じゃなかった。


むしろ


もっと触ってほしかった。


1瞬だけど、


安心できた気がした。


この人になら打ち明けてもいい…。


とか思っていたり…
< 10 / 79 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop