桜の咲く頃 ~君に~
ならいっそ止まないでほしい。
雨が止んで空が晴れても、
私の心は晴れないから。
雨が降っていれば
このみすぼらしい姿を全部
雨に濡れているせいだと錯覚できる。
雨が降っているせいだと錯覚してもらえる。
そんな気がしたのに、
雨はフッと止んでしまった。
私の上にだけ雨が降っていない。
「えっ?」
顔を上げると高校生ぐらいの男の子が立っていた。
「何やってんの?」
甘くて優しげな声。
そんな声で話しかけないでよ…。
慣れてないから何も答えられないじゃん。
「ん?ねぇ、どしたの?」
話しかけないでよ…。
「大丈夫?」
それ以上話しかけないで……。
「家は?」
ほら着た。