涙の宝器~異空間前編
麻衣はため息を吐いた。
そして、右手に持っていたケータイを力強く涼へ目掛け投げ捨てた。
ケータイは彼の足元に転がっていた。
「何すんだよ」
慌ててしゃがみこみケータイを拾った。
そのケータイを手に顔を上げた時、麻衣は手すりを越えて、手すりの外側に立っていた。
「おい何してんだよ」
怒声に全く反応しない彼女に向かって涼は駆け出した。
この時、彼は初めての感覚に襲われた。
それは恐怖から来るものだった。
体は前進しているのに彼女がただ遠く感じた。
その存在を失うという恐怖は彼をどれほどの哀しみに落とし、それを背負わせる事になるだろうか。
自律神経は侵され汗が滲む。
乱れた身体をその恐怖がさらに突き動かす。
涼が手すりを越えた時だった。
彼の大好きな彼女が飛び降りた。
そして、右手に持っていたケータイを力強く涼へ目掛け投げ捨てた。
ケータイは彼の足元に転がっていた。
「何すんだよ」
慌ててしゃがみこみケータイを拾った。
そのケータイを手に顔を上げた時、麻衣は手すりを越えて、手すりの外側に立っていた。
「おい何してんだよ」
怒声に全く反応しない彼女に向かって涼は駆け出した。
この時、彼は初めての感覚に襲われた。
それは恐怖から来るものだった。
体は前進しているのに彼女がただ遠く感じた。
その存在を失うという恐怖は彼をどれほどの哀しみに落とし、それを背負わせる事になるだろうか。
自律神経は侵され汗が滲む。
乱れた身体をその恐怖がさらに突き動かす。
涼が手すりを越えた時だった。
彼の大好きな彼女が飛び降りた。