涙の宝器~異空間前編
病室。

あの時、ミコから麻衣に送られたライン。
ミコと涼の口づけを撮られ拡大された写真だった。
犯行はミコの連れの一人。

麻衣は本当にただ純粋な女の子だった。
意識不明の彼女は目覚めることをしない。

この医療器具は麻衣を助けてくれるのだろうか。
涼は何を信じていいのか分からなくなっていた。

ただ一つ理解出来ることは、麻衣は奴らに騙(はめ)られたという事だ。

機具から流れる心拍数の電子音だけがこの病室の存在だった。

涼は麻衣の手を握った。



幻想の世界。

夜、渋谷のハチ公前に涼は一人で立っていた。

彼などアリの一匹に過ぎなかった。
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