涙の宝器~異空間前編
もうこの端っこに立ち続けて数時間が経っている。

目の前で待ち合わせた人たちは次々と去っていく。

それに合わせて、また別の人が現れて待ち始めた。
その繰り返し。

壁にもたれた涼は目を閉じる。
そもそも一人で数時間も立ち尽くす理由は何だろうか。

夢のようなデジャブのような、ここ渋谷に吸い寄せられるかのように来たのかもしれない。

少し経ち、いい匂いが彼の鼻を刺激した。
その匂いは香水だった。
背筋を伸ばし左の方へ彼は視線を流した。

そこには香りを纏ったエンジェルが立っていた。
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