涙の宝器~異空間前編
哲章はそう吐きつけてスタート地点へと戻っていった。
スタートまであと1分のカウントが会場全体を大歓声で震わせた。
俺はスタート地点に向かって歩きだした。
もう周りの声など俺には何でもなかった。
俺がいま欲しいのは、スタートを告げるピストルの音だけだ。
歩いている途中、色んな映像が俺の中に流れた。
それは麻衣との様々な思い出たち。
麻衣はいつも笑っていた。
そんな彼女のおかげで生きる希望を手に入れることができた。
この人を天使と言わずに何と言おうか?