涙の宝器~異空間前編
俺は涙を拭いながらさらに見続ける。
次に出てきたのは兄貴だった。
茗荷谷で別れを告げたつもりだったが、やはり俺だけの一方的な別れではなかったようだ。
兄貴はきっと俺たち一族の礎(いしずえ)を築いてくれる!
本当に、共に苦労した人生だった。
俺のこと忘れないでくれよ兄貴?
そして幸せになってくれ!
俺は魂で兄貴に気持ちを繋げた。
兄貴は大きく手を振った。
俺は黙って兄貴に背を向けた。
もう十分だった。
もう見たくない!
このままどこでも行けばいい。