涙の宝器~異空間前編
「最後まで目を背けてはいけません。
次の人が最後になるでしょう。
ですが、もしここで誰も現れなかった場合、天国に行くことは叶いません。
天国に行けるということは、地獄の何百倍も幸せな事なんですよ?
あなたが残した者、幸せになって欲しい人に失礼じゃありませんか?
どうか、最後まで自分の足元をしっかり目に焼き付けておいてください」
運転手の言葉には力があった。
俺は黙って背後に目をやった。
これ以上他に誰か来るのだろうか?
俺にはもう誰も残っていないはず……