涙の宝器~異空間前編
速やかに五百円を渡した。

「あ、ありがとうございます!」

女性は驚いたように言った。

「いえ、 それじゃ」

「はい」

涼はマンションを出た。
親切な自分に驚いた。
まるでドラマのワンシーンのように思えた。

女性のマンションは涼の自宅とさほど距離が離れていなかった。
それから数日後、あの女性にたまたま会ってしまった。

二人は対抗して歩いていた。
果たして向こうは涼に気づいているのだろうか。
ここは素通りが妥当だろうと弁える。
だが、涼はすれ違いざまに話しかけた。

「この間はどうも」

「え?」
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