涙の宝器~異空間前編
怒りの視線は自動的にミコへ飛ぶ。

ミコの傍には連れであろう女が一人と男が二人。
奴らは殺伐とした涼の表情を伺い面白んでいた。

しかし、そんな事などどうでもよかった。

夏祭りの賑やかさは、この事件など初めからなかったかのように呑み込んでいった。

それから涼はどのくらいの距離を走っただろうか。
この間、何度も麻衣へ電話を試みたものの通話になることは一度もない。

静けさが増し、次第に人の気配が無くなってきた。
どこにもないその姿。
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