涙の宝器~異空間前編
最後の正月。

俺は正月休みに入ると同時に、一年生の時から続けてきたバイトを辞めた。
さすがにここまで続けてしまうと別れ惜しくなった。

いつか恩返しがしたい気持ちがあることを俺は確信していた。
ここで働かせてもらえなかったら、今頃どうなってしまっていたんだろう……

考えるだけで怖かった。
社員の人もパートの人も俺を褒めてくれた。
社長もその奥さんも褒めてくれた。
これは俺にとっての第一歩の別れ。

俺が漕ぐ黒いチャリンコは、夜道へと小さく消えていった。
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