涙の宝器~異空間前編
彼女のこんな姿など見たくはないと言わんばかりに涼は歩を進めた。

「麻衣どうした?」

ゆっくりと近づいていく。

「来ないで」

怒声が飛ぶ。驚いて足を止めた。

また冷や汗が首を伝っていた。

「麻衣どうしたんだよ?」

彼女は手すりにもたれた。

「私には涼しかいない。だけど、涼はそうじゃない」

「何言ってるんだよ」

睨み合いの沈黙が流れた。
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