colors
梓は無言のまま、視線すらこちらに合わせないまま。

「ん?」

俺に何かを差し出した。

小さな箱。

ラッピングしてあるが、いかにもワゴンセールで500円均一程度で売られていましたと言わんばかりのチープな包装だ。

「ほら、やるよ」

梓がぶっきらぼうに言う。

「…お前なぁ」

俺はあからさまに嫌な顔をしてやった。

「今日何日か知ってるか?2月17日だぜ?バレンタインから何日遅れ?普通義理でも当日に渡すもんだろが」

昨日の喧嘩の余韻も引き摺っている。

梓の内心など考える筈もなく、容赦なく辛辣な言葉を浴びせてやる。

< 183 / 209 >

この作品をシェア

pagetop