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突然。

前を歩いていた後藤君が立ち止まった。

「?」

驚いて同時に立ち止まる私。

直後、プツッという何かが切れるような音。

「ん」

振り向いた後藤君は、私に手を差し伸べる。

…恐る恐る両手を差し出す私。

その手の中に、ボタンが落ちた。

制服の第二ボタン。

一つしかない、制服の第二ボタン。

彼はそれを、私にくれた。

「…年に一度は…帰ってくるから」

無口な後藤君が、精一杯の言葉で私に言ってくれた。

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