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「ぷはーっ!」

本当は一口だけあげるつもりだったんだけど、彼女は一息にジュースを全部飲み干して、満足そうに溜息をつく。

「ありがとぉ!部活の帰りで喉からからだったんだぁ!」

「へぇ…部活何やってんの?」

「陸上部だよ」

そうなのか。

そう言われてみれば、小柄で細い足で、クリクリした瞳はどこか小鹿を連想させる。

陸上部と言われると妙に納得できた。

…ともかくこれがきっかけ。

放課後のこの時間、この駅、このベンチ。

彼女はいつも座ってて、帰りにいつも顔を合わせる。

いつも俺のジュースを物欲しそうに見て、いつも俺が半分あげる。

それが間接キスだと気づくようになったのは、俺が彼女を意識するようになってからかな…。

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