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そう思って振り返る。

「おはよう」

そこにはセーラー服姿の女の子。

顔は何だか昨日教室で見たような気がするが、名前は思い出せない。

「え…と…」

「滝本君だったっけ?」

こっちが名前を訊こうとするよりも先に、女の子は俺の名前を確認する。

「あ、ああ…」

「そっかぁ、よかった、名前間違えてたら失礼だもんね」

そう言って笑う女の子。

俺なんて君の名前すら覚えてないよ…。

そんな俺の心を見透かしたように。

「斜め前の席の松下、だよ」

彼女は明るい笑顔を見せた。

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