強さと弱さと君と僕。
彼は、とても楽しそうに話している。
こんな風に笑うんだ、なんて思ってみる。
「繭ー?聞いてんのー?脳内デート中ー?」
「ち、違うよ!バカ!」
その声に、教室は一瞬静まり返った。
「あ・・・」
彼も驚いて、あたしの方を見ている。
心臓が大きな音を立てた。彼は席を立ってこっちに来る。
「お、和来たじゃん」
「繭がんば!」
彼があたしの目の前に居る。
それだけで、心臓が持たない。
「繭ちゃん」
彼が笑って、茶色い瞳が輝く。
「あ、こんにちは・・・大きな声出しちゃってごめんなさい」
折角名前を呼んでくれてるのに・・・。
「びっくりしたけど・・どうしたの?」
「あのね、繭があなたのこと・・・っ」
「美紅!」
「・・・どうしたの?」
美紅を見ると口パクで『会いたかったから、って言え』と言っている。
その隣の優樹くんは頷いている。
「・・・・会いたかったから・・・・・・」
「え?」
言ってしまえ。会いたかったから、って。
「・・何してるかなぁーって思ってね?うん」
しかし、弱虫なあたしは言えずに咄嗟に出た言葉を上手に吐いた。
「そっか。あ、俺もねさっき教室行ったんだよ?でも居なかった」
「あ、ごめんなさい・・」
「いや、大丈夫。」
「・・・・・」
会話がない。
会話、会話・・・。
「あ、良かったら一緒にお昼ご飯食べない?ほら、あんたも一緒に!」
「え、俺?」