強さと弱さと君と僕。
睫毛にマスカラを塗って、目にアイシャドウをのせて、ほっぺにパウダーをつけて。
ものの5分ほどで完成した。
「はい、目開いてー」
言われた通りに目を開くと、美紅は目を大きくした。
「あんた、めっちゃ可愛いじゃん・・・」
「嘘だぁ〜?」
鏡を見ると自分の変身ぶりに驚いた。
「か・・可愛い」
「ナルシかよっ。化粧映えするね〜。超可愛いよ♪」
これなら王子もイチコロかも♪、化粧品をしまいながら言う。
「ありがとう!美紅が居てくれてよかった」
睫毛の伸び具合や、目の大きさに感動しながら新しい自分に出会えたことを感謝した。
「ふふん。マックおごってくれればいいよ」
「・・・分かった」
友達が居たから出来たこと。
美紅が居たから出来たこと。
その小さな出来事が、あたしを成長させている気がした。
「あ、時間じゃん!行こうか」
髪は結ばずに下ろすことにした。
変だったらどうしよう?と言うと、美紅は大丈夫だよ。と言ってくれた。
あたしは本当に彼のことを好きなんだ。
あのとき、確信した。でも・・・。
そんな戸惑いの思いがある。過去を思い出してしまう。
中学生の頃の記憶が、幸せになりたいという気持ちに歯止めをかける。
『幸せになんてなっちゃいけない』
『もう誰も信じちゃいけない』
あの日の言葉が、突き刺さって離れない。
「繭ー、行くよ」
「うん・・・」