強さと弱さと君と僕。
過去はいつでも鮮明に、あたしを苦しめる。
どんなに楽しいときでも、あたしの体の頭の片隅に住み着いている。
汚れのない思いが生まれても、すぐに汚れを持った思いが支配する。
それが時々、あたしをおかしくさせる。
過去はもうやり直せないって分かってるけど。
でも、それでも。
「そろそろ着きますね」
彼がバッグに本をしまう。
「・・・そうですね」
楽しい時間は長くは続かなくて、またあの時間がやってくるんだろう。
電車が駅に着くまで、あと少ししかない。
せめて、その時間までは・・・、忘れさせてほしい。
これから待っている現実に、目を背けさせてほしい。
電車を降りて、改札を通る。
ここで、バイバイか・・。
そう思っていたら、彼が振り向いて言った。
「良かったら、一緒に行きます?」
「え?」
「学校まで・・・」
「あ、はい!」
時が止まってほしい。
初めてそう感じた瞬間だった。