強さと弱さと君と僕。

いつもなら1人で歩いている道を、2人で歩いている。
時々彼は振り返る。
どうして?、と訊くと心配だから、と笑った。
そんな優しさに、何故か胸が締め付けられた。

「じゃあ・・・ここで」
「・・はい」
そんな時間はすぐに終わってしまった。

彼が、教室へと歩いていく。
その内に他の男子が彼に話しかけている。
さっきまで隣に居たのに、もう遠い存在になってしまった。

教室への足取りが重い。
彼の姿はもう見えなくなって、ひとりぼっち。

ゆっくり、なるべくゆっくり教室へと向かう。
『誰も気付かないで』
そんな小さな願いは教室に入った瞬間、あっけなく崩れた。

「さっき、男と歩いてたよね?」
この声。あたしの世界で一番嫌いな声。
顔を上げると、いつも通りの顔があった。
その声を無視して、席に座る。

「何シカトしてんの?何様だよ」
持っていたカバンを取られ、中身がばら撒かれる。
やめて、とあたしが言う度に笑ってカバンを他の人に回す。

こんな風景、あたしには見慣れたものだった。
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