レンズ越しのあい
何ヶ月ぶり……何年ぶりだろう?
こんなにもステキな虹を、じっくりと見たのは。
「空は奇跡を起こす。条件さえ揃えば、芸術的奇跡を無限大に起こすんだ。同じはずがない」
あたしたちは普段、こんなにもじっくりと空を見つめることをしないだろう。
当たり前に違う雲の形とか、明るさ、暗さ。
同じに見えても、日々変わる、空の形。
場所によっても、性質が変わる。
当たり前は、当たり前じゃない。
「虹……キレイだね」
「あぁ」
少し時間を置いてから、校舎内から虹に気付いた生徒の声が聞こえ始めた。
遠くから聞こえる声。
でもあたしたちの周りには誰一人として人は通らない。
なんだか、二人だけの世界のような錯覚に陥った。