レンズ越しのあい
もう逃げられない。
逃げちゃいけない。
あたしの家は、学校から徒歩10分の距 離。
つまり、近い。
いつもは助かるこの距離も、今は憎ら しい。
ダメ、自分に負けちゃダメ。
すぐに着いてしまい、家に上がる。
「あら七海ちゃん、久しぶりね」
「おばさん、お久しぶりです!お邪魔 しまーす」
七海は明るい声を出す。
ううん、わかってる。
明るくふるまってること。
なんとなく、いい話ではないこと、勘 付いてるんだと思う。
あたしが七海の気持ちが分かるよう に、七海もあたしの気持ちが分かるは ずだから。