レンズ越しのあい


「かわいい」


静くんはあたしに、とんでもないバク チを落とした。

かかかかかかかかか、か、か、か、 か……!?


顔に熱が集まるのを感じる。


「なんだよその真っ赤な顔といい角度 といい言いなれないかんじといい…… ダメ、満里奈もう……あーもう!」


あの静くんが。

あの、静くんが、取り乱してい る……。


「今までは出来たのに、抑えが効かな い……」


そう言って静くんはあたしの手を引い てすたすたと歩いていく。

は、速い!


「あ、満里奈ばいばーい」

「あ、ばいばい七海!」


歩きながら教室から手を振る七海に、 あたしも手を振り返す。


いつの間にか人気のない渡り廊下に着 いていた。

……そして柏原くんは止まった。


「ごめん、満里奈」


そう言って彼はあたしの唇にキスをした。
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