レンズ越しのあい
――感じる、唇に。
少し濡れた感触。
突然のことで、目を開けたまま。
彼は目を閉じて、あたしを感じる。
――間違いなく、キスをしている。
トクトクトク、心臓が速くなる。
それに安心して目を閉じる。
たった数秒だったけど、すぐに柏原く んは唇を離して、あたしの手を引い て。
いつも通り、一緒に帰った。
「満里奈、ごめん。でも俺、後悔はし てない」
「……あの、だ、大丈夫」
……言わなくちゃ、ちゃんとあたしの キモチ。
「あたしも……静くんが好きだから、 嬉しかった……よ」