キスして
パパの顔は硬直してた。

ダメってことだよね…。

驚きで口が動いてなかった。

外人の顔だし、まるで腹話術の人形みたい。



「菜穂、なんでバイトしたいの?」


パパの変わりに隣のお兄ちゃんが聞いてくれた。

壮陛がするからなんて言えず一般的な言葉で答えた。


「だって…勉強になるし。お金、自分で稼いでみたいし。いつまでも甘えてたくないの。」


下を向きながら言った。

ダメってわかってるから。



「菜穂ちゃん、大変なのよ?バイトって…。お勉強だって中途半端になっちゃうかもしれないのよ??遊びにだって行けないのよ??」


遊びにって…。

門限7時のくせに…。

どっちにしろ行けないし。


「いいじゃないか。菜穂、やってみなさい。でも家から近いところってのが条件だぞ。よいな?時間は9時か10時までだそ。」


な、なんとパパから信じられない言葉をもらった。

バイトしていいだなんて…。

しかも9時か10時までしていいだなんて…。

信じられなくて目を大きくあけて言葉が出なかった。


「わかったのか??」


パパの押しの言葉にやっと反応して


「わかった!!ありがとう!パパ!!」


そう言うとパパはニコニコしていた。

ママは不安そうな顔をしてたけど…。



家の近くってことは壮陛とは一緒には出来ない。

でも…ズルい考えだけどバイトって言って9時か10時まで遊べるってこと。

夜遊ぶってことは夏祭りしかなくって夢だった。

いつも明るいうちに帰ってたから。
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