キスして
壮陛もドアを見る。

見ないでほしい。

見とれたりしちゃ嫌。


ドアの近くにいた人が壮陛を指さした。

そしてミス北洋らしき人はこっちに歩いてきた。

壮陛もジッと見てる。


「そ、壮陛?」


不安になりすぎて小さく声を掛けた。

でもそのその瞬間、ミス北洋らしき人が近くに来てて声をかけた。


「涼風くん?」


遠くで見るより近くで見た方がそりゃキレイで肌もつやつや。

完璧という感じだった。



「なに?」


壮陛はミス北洋を見て普通に答えた。

でも絶対なんだこの美人って思ってるはず…。


「ジョイでバイト、するよね??」


ニコッと笑顔で言うミス北洋らしき人。


見ちゃいけないのにチラチラみてしまう自分が嫌だった。



「あんた誰?」


「2年の木下さやか。わたしもジョイにいるの。で、森野さん知ってるでしょ?面接した店長。あの人が、明日来るとき一緒に来てくれって。入り口とか色々教えてやってって言われたの。だから一緒に、ね。」


そう言うとまたニコッと笑った。

きっと男の90%は今の笑顔で落ちるんじゃないかな。

わたしでも落ちそう。


クラスの半数が2人を見てた。


「わかった。」


そう言うとカバンを持って背中にまわした。

そしてわたしを見て


「ほら、帰るぞ。」


と言って歩き出した。

その瞬間


「待って、ちょっと番号くらい教えといてよ。明日困るじゃん。」


木下さんは壮陛を止めた。

嫌だ。

番号交換なんてしてほしくない。

…でも壮陛は立ち止まってめんどくさそうな顔をしながら携帯を出した。

そして赤外線で送り、その後


「あとから番号入れてメールしとくね。じゃ、明日。」


そう言って木下さんは去った。

そしてこっちをまた見た壮陛。

でもわたしは目を逸らしてしまった。
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