キスして
嫌だよ、連絡取り合うなんて。

仕事だからしょうがないのかもしれないけどあんな美人なんだもん。

窓側ではわたしの様子が分かってるのか、涼子ちゃんが心配そうに見てた。



「ほら、帰るぞ。」


そう言って壮陛はわたしの腕をつかんだ。

強引。

壮陛の早くこの場から立ち去りたいって気持ちが溢れ出てる気がした。


気にしちゃいけないよね。

わたしは、彼女だもん。

強くならなきゃ。

この前、好きって言ってくれたもんね。


窓側の涼子ちゃんと鈴ちゃんに手を振ってわたしは並んで帰った。

涼子ちゃんは変わらず眉を下げて心配そうな顔してたけど…。



手、繋いで歩きたかったけどやめておいた。

何か嫌だった。

自分の中ですごくモヤモヤしたものがあったから。

ヤキモチだってわかってる。

スネちゃってる自分がいた。




「何ブスくれてんだよ。しょうがねーだろ、同じバイトなんだ。」


壮陛にはお見通しだったらしくわたしの手を取った。

指を交差させて繋ぐ。


「ぶ、ブスくれてないもん!!」


「いや、明らかにブスくれてる。ブサイクな顔しやがって。」


「ぶ、ブサイク!!ひ、ひどい…。」


そんなわたしを壮陛はフッと笑ってた。

またこの笑い方。

声出さないんだ、壮陛。

妖艶っていうのかな…。

でもいつも通りに戻った気がする。

大丈夫だよね、仕事だから仕方ないんだもんね。

気にしない。

機嫌は戻り、壮陛に笑顔を自然に向けることができてた。



でも、そんなわたしらの姿を後ろから見てる人がいたなんてこのときは全く気付いてなかった。
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