キスして
「バイト、俺は反対だからな。だいたいお前、無理だろ。」


ずっとその話だった。


「何で壮陛は反対なの?ズルいよ、壮陛ばっかバイトするの。」


素朴な疑問。

すると壮陛は黙り込んだ。

ほ~ら、何もいえない。


「いいでしょ?まだ店とか決めてないから決まったらちゃんと言うし。」


そう言うと壮陛はちょっと睨んできた。

いつも。

気にくわないと睨むんだもん。

何も言わないし、もういいや。

いいってことというふうに解釈しちゃおう。


そうこう話してたらバス停に着いた。

壮陛とはバスは違うからここでいつもお別れ。



「お前さ、分かってる?」


バスの時刻表みてたら壮陛が言った。


「え?何を??」


するとまた壮陛は不機嫌そうな顔をしながら言った。


「俺がバイト嫌な理由。お前、断れないタイプだろ。変な奴に絡まれたりしたらどうするわけ??」


た、確かに断れないタイプだけど変な奴に?

絡まれる?

さっぱりわかんないよ。



「変な奴って誰?」


そう言うとまたさらに不機嫌そうな顔をしながら


「天然にも程がある。」


って怒った。


「天然じゃないもん!どういう意味!?わかんないし。」


「だから、バイト先に男がいて、そいつがお前に惚れたらどうすんの?って意味だよ。お前…ちゃんと1人で断れんのかよ。学校じゃあの2人がいるから大丈夫だろうけどさ。」


そう言うとわたしとは逆を向いた。

そんな心配してくれてたの??


「断るよ。壮陛以外、興味ないもん。」


握った手をギュッと握って言うと壮陛はこっちを向いて抱きしめてくれた。

お昼の人通りの多い道なのに…。


「恥ずかしいよ。」


「まず店に電話する前に俺に教えろよ。」


そう言ってわたしを離さなかった。
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