キスして
「壮陛、絶対菜穂ちゃんにも、誰にも悟られるなよ!とくに鈴ちゃんに気をつけろ!!!!」

朝っぱらからフジがギャンギャンうるさい。


「わかってる。」

それだけ言うと教室に入った。



「昨日連絡するって言ったのに~!!」

菜穂の第一声だった。

覚えてたよ、ちゃんと。

でも、お前のことだけしか考えてないときに連絡するのが礼儀だと思ったんだ。

昨日の俺は…お前だけじゃなかった。

でも決めた。

顔見たらお前が愛しい。

会わないって。


「あぁ、わりぃ。フジとあのあと地元の集まり行ってさ、結構遅くまで遊んでたから寝てると思って。」


いつもの調子で答えた。

もういつもの調子でいいんだ。

皐のことは忘れる。

今は目の前のこの子を大切にする。


…でも揺らいだ。

こいつが毎日赤星って男に送ってもらってるのを聞いて。


2人で夜道歩いてるわけ?

ふざけてねぇ??

普通兄貴でも親でもいるだろ。

なんであいつなんだよ。

お前に気があるんじゃねーのかよ、気づけよ。


でも言えない俺。

感情を爆発させることが…出来ない。

ふてくされてしまう天邪鬼だ。


「ふーん、ま別にいいけど。」

俺が行けたら…いいのに。

俺が菜穂のそばでバイトすればよかったって後悔した。
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