キスして
「どうすることにした??」

食堂で聞いてくるフジ。


「会おうと思う。あいつ今、絶対お先真っ暗じゃん。望みなら叶えようかと。」


フジの顔は見れなかった。

引き金があの赤星って男なわけじゃない。

本当はそうだろうけど、そう思いたい。

でも菜穂にムカついてしまって…会うことに決めた。

皐は今、弱ってるだろうし助けになるのなら。

あいつは足がなくなっても会いたいって言うんだから。


カチャンと食器にスプーンを置く音が聞こえた。

チラッと前を見るとフジが置いてる。


「お前が決めたなら何も言わねーけどさ、バレるなよ。あの子に。」


なんでお前が沈んだ顔してんだよ。


「わかったよ。」

小さく言うと

「俺はお前も、菜穂ちゃんも大事だから。味方だから。両方の意見を応援する。お前と付き合いは長いけど俺は女に優しいんだ。」

そう言うと再びスプーンを持ってカレーを食べ始めた。

どっちかだけを取ることはできねぇってわけか。

青木の友達なわけだしな、菜穂は。

だからだろう。


「おう。」

それしか言えなかった。


会うと決めたら菜穂の顔が見れなくなった。

同時に冷たくしてしまう自分がいた。

無意識に。

きっと菜穂は赤星って奴と一緒に帰ってるからと思ってるだろう。

それが原因と思われてるほうが俺にはよかった。


マサシに言ったらあさって、昼に学校サボれって話だった。

明日、バイト先の飲み会に歓迎会の主役とか言われて無理矢理連れていかれるしちょうどよかった。

行くと知ったときの木下の顔。

嬉しそうに笑ってたけどそんなのどうでもよかったし木下なんか眼中にない。

今の頭の中を占めるもの、菜穂が半分あるとして、あってはならない他の女の存在、皐が少しいるのは事実だったけど。

ごめんな。
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