キスして
わたしは壮陛の家に向かった。

場所は行ったことないけど大体わかる。

それには涼子ちゃんと鈴ちゃんもついてきてくれた。


壮陛の家の近くのバス停で降り、歩いてその方向を目指す。

終止符を打つとは決めたけど言うのはわたしじゃない。

壮陛に言ってもらう。


ちゃんと話を聞こうと決めた。

もう泣かないとも。


「…あれ涼風よね。」

近くのコンビニの前で口を開いた鈴ちゃん。

鈴ちゃんの目線を追うと確かに壮陛の姿。

道を挟んでるけどはっきりわかった。


私服姿の壮陛と、知らない男の人と、車椅子に座った女の子。

そして車椅子の人が帰っていく。

それを壮陛と知らない男の人が見つめる。


「あいつ何やってるんだろ。」

そう言う涼子ちゃんの横でわたしには嫌な予感がしてた。

わたしに何も言わず休み、あの女の子に会いにきてた気しかしなかったから。

それは鈴ちゃんも一緒だった。


「あの子と会ってたんでしょうね、あの2人は。」


目の前が真っ暗になった。

そのとき、涼子ちゃんは信号が青になったのがわかると1人で走り、壮陛の方に向かっていく。

わたしは行かなきゃと思うけど立ち止まったまま。


「菜穂、会わないほうがいいわ。もう菜穂に傷ついてほしくない。」

そう言って鈴ちゃんはわたしの手を握り、動けないようにした。

黙って涼子ちゃんを見てた。

涼子ちゃんの登場に驚いた壮陛。

そして涼子ちゃんがこっちを指差し、こっちを見る壮陛。

そしてすぐ視線を逸らす。

口を開き喋り続ける涼子ちゃん、そして小さく口を開く壮陛。

隣の男の人も喋り、そして…あからさまに怒った顔して大きく口を開ける涼子ちゃん。

そして何かを言い放って…こっちに向かってきた。

壮陛を見てるけど一回たりともこっちを見ない。

壮陛…こっち見てよ。

本当にもう…終わりなの?
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