キスして
帰りに俺が木下を迎えに行くことが約束だった。

だから校門で待ってるってさっき言った女には悪いけど行っても女連れ。


別に付き合う女は木下だろうが、さっきの女だろうが誰だっていいんだけどな。

菜穂じゃなきゃいい。

あいつのことだけは忘れなきゃいけないから。


木下を迎えに行こうとしたときだった。

菜穂が知らねぇ男に絡まれてるのを見つけた。


青木や本田は何してんだよ、何でいないんだよ。

そう思ってるときに腕をつかまれて引っ張られていく姿に変わった。


ドクンと跳ねた心臓。

助けるのか、助けないのか…。


迷ってると思ったのにもう足が動いてた。

男の手を掴んでひねりあげた。

菜穂の方は見れない。

でも男を上から見下ろしながら


「やめとけ。」

って小さく言った。


そして去っていく男たち。

菜穂を見らずに立ち去ろうとしてた。

恥ずかしくて見れない。

シカトできなかった俺が情けない。

でも後ろから聞こえた。


「ありがとう…。もう絶対わたしに構わないかと思ってた…。」


小さな声。

振り向くと唇を強く噛んだ表情をしながらこっちを見てた。


「別に…。たまたま…見えたから。」


本当はもっと話したい。

できることなら今すぐ、誤解をときたい。

でも次に聞こえたのは衝撃の言葉だった。


「わたし…あさってで学校からいなくなるから。だから嬉しかった、助けてくれて、話せて…。」
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