キスして
ゆっくり階段を降りて玄関に向かう。


「菜穂ちんっ…──」

そこには予想外にも涼子ちゃんの姿があった。


「涼子ちゃん?え?どうしたの??」

わたしが近寄るとわたしの手を引く涼子ちゃん。

急いで近くにあったサンダルを履き、そのまま玄関を出た。


「え?え!?どうしたの??」

聞くけど何も言わない。

門の外にはフジくんがいた。

その横にはタクシー。



そのとき──…

肌寒い夕方なのにフッと優しい風が吹いた。

頬を撫でるようなやわらかい風。


「菜穂ちゃん急いで!!」

風に気を取られてたわたしに次は後ろからフジくんが押してタクシーに押し込んだ。


「え?なに??てかどうしたの??」

気付いてた。

2人の様子が尋常じゃないことに。

でもさっきキツイって思ってたよりももっと考えたくなかったから決して口に出さなかった。

なのに…──


「壮陛が…──事故った。」


目の前が真っ青になった。

壮陛…無事でいて…──。


「…ウソ──。え、ひどいの??」


「涼風は大丈夫だよ!!」


横からわたしの手を握って涼子ちゃんが話しかける。

ひどいの…???

その答えにどうして答えてくれないの??

その上に水滴が落ちた。

わたしの目から。
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