キスして
肩を抱いてわたしを座るように誘導する涼子ちゃん。

それを拒否してわたしはドアの前に立ち続けた。


「壮陛さ、事故ったんだって。道渡ってたら横来てたトラックに巻き込まれたらしくて…。」

涼子ちゃんの横に立ってフジくんが話をしてくれた。


「方向からして、菜穂ちゃんの家行く途中だったんじゃない??」


「うわーーっっっ…」


わたしは言葉にならなかった。

大声で叫び、そしてその場に崩れた。


「違っ!!菜穂ちんのせいじゃないよ!!ちょっとフジ!!」


「いや、そういう意味じゃ…」


その言葉なんか聞こえずわたしは泣いた。

2人の言葉は入ってこなかった。



そのとき、涼子ちゃんの反対側からも温かい手を感じた。

顔は上げられなかったけど声でわかった。

さっき聞いた声。


「泣かないで…。あの子は大丈夫。きっと…。」


壮陛のお母さんだった。



でも…──



願いは届かず…──



その1時間後に壮陛は息を引き取った…──



親を置いて。



友達を置いて。



そしてわたしを置いて──…。
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