キスして
「だから言ったじゃない。苦労するだろうって。」

朝、涼子ちゃんはまだ来てなくて、鈴ちゃんにメールが返って来ないし冷たいって相談をしていた。

でも来たことをホントは最初、自慢したんだけどね。

呆れられたけど。


「だって…好きだもん。」

鈴ちゃんにそう返すと大きくため息をつかれた。


「じゃ、耐えるしかなさそうね。お疲れ。」


そう言うと閉じていた本を開いて読み始めた。


「冷たいなぁ。もう…」


わたしは唇を尖らせて言っていると鈴ちゃんがメガネの奥からジッと睨んできた。

エヘッと笑って見せるとまた本を閉じて口を開いた。


「そういえば、付き合ってること秘密にするの??」


わたしたちが付き合ってるなんてまだ鈴ちゃんと涼子ちゃんしか他の人には知られてないと思う。

涼風くんが仲のいいと言ってた人に言ったとは…何か思えないしね。


「秘密にするわけじゃないけど言う人がいないみたいな??」


友達が少ないってことだし、苦笑い。


「あのね、菜穂。涼風は相当な人気があるってわかってるよね?あの口の悪さでもファンクラブが密かにあるらしいのよ。それでもって菜穂、あんたも相当な人気があるってわかってる??その外見でその笑顔。憧れの的なのよ。あんまり人に言わないほうがいいかもってわたしは思うわ。」


わたしはつばをゴクリの飲んで聞き続けた。


「でも内緒にいつまでも出来るわけないと思うし、バレたら嫌がらせだってされるかもしれない。それは覚悟しとかなきゃダメよ?」


わたしは鈴ちゃんを見つめ、コクリと頷いた。

別れたくなんてないし…。


「もしも噂が流れたら出来るだけわたしたちのそばにいなきゃダメよ。」


そう言うとまた本を読み始めた。

そばにいたら巻き込まれるかもしれないのに、そう言ってくれるの??

初めての友達だし…胸が痛くなって鼻がツンとしてきた。


「ありがとう…グスッ」


「ゲッ、泣かないでよ!!気持ち悪い子ね!!」


こうやって突き放す鈴ちゃん、やっぱりいい人。

友達の暖かさにまた触れられた。
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