キスして
「菜穂、俺ほんま菜穂のこと…」


わたしが横のときに廉が口を開いた。

小さく、そして低い声で。

涼風くんも立ち止まった。

そして振り返って廉に向けて口を動かした。


「好きでいるのは勝手だけどこいつ、俺のことしか見てねぇから。」


そう言ってまた歩き始めた。

わたしは何も言えず、ただ手を引かれて屋上へ向かった。


先に窓を乗り越え、その後に涼風くんが。

窓を乗り越えるんだから当然パンツが見えそうなわけで…。

反対を向いてもらってた。



屋上に入ると今日も天気がよくて一面青空。

でも廉のあんなことがあったからか、心は曇ってて…。

人を傷つけるって心痛くなるね。

顔に出てたのか、涼風くんが覗き込んできた。
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