蹴球天使
「ここ」
職員室を指さす。
「ありがと、じゃあ」
そういいながら
明るい無邪気な笑顔を向ける美少女に戸惑うのは顔があいつにそっくりだから。
「あぁ」
彼女が職員室に入ってからもしばらく脈打つ心臓に手をあててドアを見つめていた。
ブーブー
視線をドアから離したところで昨日女に折られて買い替えたばかりのケータイのバイブ音が鳴った。
《尚》
ディスプレイにうつる文字をみてから電話に出た。
「おい、カイトお前今何してんだよ」
「何って、別に」
「お前の女が校門に来てんぞ」
「女?誰だよ」
「なんか雑誌で見たことかる顔」
「雑誌?名前は?」
女なんていっぱいいすぎてほとんどは誰が誰だか分からない。
「シイっつってる」
「シイって………ちょっと待っててって言って?」
シイとは多分矢高椎。
俺が唯一本気で惚れたことのある女。
そしてモデルをやってる俺の元カノ。
さっき以上に心臓が高鳴る。