snake in the grass
≪Ⅰ≫
叶夜潤(キョウヤマサル)はパートナーの谷口美月(タニグチミヅキ)と共に町外れの小さな村にパトロールに来ていた。
この村には警察という組織が無い為、警察庁から月に一度パトロールを行っている。
潤と美月は村人達と挨拶を交わす。
いつもと同じ様に村長の住む家へと足を急がせた。
村長の家は村の北側にある、赤い三角屋根の大きな家。
村では一番の大きさである。
立派な玄関扉。
潤は玄関チャイムを押した。
家の中からパタパタとスリッパの音がして、扉が開いた。
「お待ちしておりました」
明るい声で中から出てきたのは赤紫色のスリッパを履いた村長の妻、上村真由子(ウエムラマユコ)だった。
目の横に小さな皺をつくって微笑む。
いつもの様に客間に案内され、村長の上村剛(ツヨシ)が来るのを待つ。
「凄い大きな家ですね」
目を丸くして辺りを見回す美月は、この家も村に来るのも初めてだった。
美月が潤の勤務する警察庁に来たのは半月程前。
以前も美月は別の警察庁に勤務していたので、警察歴は潤と大差はない。