snake in the grass
≪Ⅵ≫
森の奥深く、教会よりも先へ行った所に女性が倒れていた。
「大丈夫ですかっ!?」
潤は女性に走り寄る。
「...クド...は...よ...うっ、、、くはっ」
女性は口から大量の血を吐いた。
女性は恐らく、『クドラクは蘇った』と言いたかったのだろう。
それだけ言い残し、女性の生命線の糸は切れてしまった。
血を吸われたのか、肌は青ざめ、首筋には教会の前で死んでいた女性と同様に2つの穴が開いていた。
やはりこの村には神話の吸血鬼が存在するのだろうか。
潤はユラユラと立ち上がり歩き出した。
美月の元へ戻る為?
いや、違う。
潤は確かめるために歩き出したのだ。
潤は扉の前で足を止める。
その扉の絵は剥げていた。
屋根のてっぺんにある物も壊れている。
潤は深呼吸をしたあと、ゆっくりとドアノブを回す。
中に入ると10m程先に埃の積もった棺桶が一つだけ置かれていた。
上村剛の話が本当ならば、この中にクドラクが横たわっている筈だ。
指紋が付かないように手袋を填め、意を決して棺桶の蓋を押す。
徐々に口を開く棺桶の中から腐乱臭と共に何十匹もの蠅が飛び出してきた。
潤は腐乱臭に耐え切れず棺桶から離れた。
腐乱臭の刺激に目から涙が溢れ、視界が歪んでいる。