snake in the grass
≪Ⅶ≫
「叶夜さんっ」
美月は潤の姿を見つけると、慌てて走り寄ってきた。
「どうした!?」
いつもと様子の違う美月を見て、潤も慌ててしまう。
「村の人達から話を聞いたんですけど、私がクドラクの事を信じないから怒って帰っちゃったんです」
美月の目には涙が浮かんでいた。
完全にいつもの冷静さを失っている。
「落ち着いて。・・・それで村の人達から話は聞けた?」
美月は上品に指で涙を拭った。
「老爺の心臓を抉り取ったのは血縁者の方でした」
血縁者という言葉に潤は目を丸くする。
「老爺は半月前に亡くなったそうなんですが、その直後から血縁者の3人も貧血や病気で倒れてたそうです。でもそれはクドラクの所為だって言うんです。なんでも、この村には吸血鬼に関する言い伝えがあるそうです。『蘇った吸血鬼のシモベの心臓を燃やし、その灰を病に倒れた人に与えよ。さすれば病は治るであろう』この言い伝えに沿って、墓を掘り返したそうです」
「やはりこの村には吸血鬼が居るのか」
「叶夜さんは信じるんですか!?」
「森で悲鳴をあげた女性も『クドラクが蘇った』と言っていた」