snake in the grass
≪Ⅹ≫
「奥さん?私は剛の姉だよ」
上村真由子はクスクスと笑う。
「そんな・・・」
それ以上言葉が出ない。
「母はまだ幼かった私と姉を連れてこの村にやって来た。だが、ヤツラはそんな私達を村の輪から除外したんだ。部外者だってだけでね」
上村剛はナイフを潤に向け、ジリジリと距離を縮める。
「“森に来い”母とアイツが話してるのを私は聞いた。そして母はその晩、姿を消し翌日、森で遺体となって見つかった。アイツは毒蛇に噛まれた事故死として私達に伝えた。だがそんな筈は無い。母はアイツに殺されたんだ。あの時ニヤリと笑ったのが何よりもの証拠だ」
感情的になりナイフを持つ手が震えている。
「私は許せなかった。だからクドラクに殺されたって事にしてアイツを殺した。そして私はクドラクを封印したとして村長にまで上り詰めた」
もう上村剛と潤には数mしかない。
「君もクドラクに殺してもらうよ」
シャーと鳴く蛇が牙を剥く。
潤は身を守る物を持っていない。
それに後退りをした所為で背中と壁がピッタリとくっ付いている。
潤は逃げる事も出来ないのだ。
毒蛇が襲い掛かる瞬間、客間の扉が勢い良く開いた。