白いジャージ6 ~先生と愛のキセキ~
私は涙が止められなかった。
沙織に対しての涙なのか、過去の自分への涙なのかよくわからない。
でも、目を閉じて浮かぶのは、あの恐ろしい顔をしたお姉ちゃんだった。
グラスを投げたことがあった。
リビングにガラスが散乱して、歩くことができなかった。
大きな事故や事件にならずにお姉ちゃんは更生することができた。
沙織も妹にそれを望んでいた。
「家の中で暴れているだけならまだいいんだ。外で犯罪に巻き込まれたりしないかってそれが心配・・・・・・」
沙織の目にも涙が浮かんでいた。
「見捨てないのは、家族だけなのに。どうしてそれがわからないんだろう」
沙織は、鼻をすすって、天井を見上げた。
私が差し出したティッシュで鼻をかんだ沙織は、少しスッキリした顔で言った。
「いつか・・・・・・変われるよね!!」
私は、涙を拭いて頷いた。
言いたかった。
“変われるよ”って。
お姉ちゃんも変わったもん。
優しい顔になった。
優しい瞳になった。
もうあの頃の面影はどこにもない。