白いジャージ6 ~先生と愛のキセキ~
思い出す。
高校生の矢沢直を、車で家まで送った日のこと。
帰りたくないとわがままを言った直のあの目。
あの寂しそうな目・・・・・・
“助けて”と俺に訴える目。
「直・・・・・・」
今、俺の奥さんになった直を、ぎゅっと抱きしめる。
あの頃は、抱きしめてやりたくてもできなかった。
授業中、寂しそうな表情をしている直を見て、俺は心が痛くなった。
でも、次の瞬間、直はとびっきりの笑顔で微笑む。
あれ?勘違いなのかな?
寂しそうに見えたけど、気のせいかな?って思うくらい。
友達と話している時の直は、本当に嬉しそうに笑っていたっけ。
でも、心の中にある傷は・・・・・・
隠せない。
俺には見えていたんだよ。
直の苦しみが。
直が何を抱えているのか、何に立ち向かっているのか、それはわからなかったけど。
必死に大人になろうと、前を向こうと、歯を食いしばっている直を俺は見ていたんだ。