黒猫-私の部下-
しっかり首にぶら下がっていた。
西野課長が首飾りに気付く前にタイミングを見計らって盗まないと盗難事件が絡んでしまう。
プルルルルル・・・プルルルルル・・・
不意に西野課長の携帯が鳴る。
「失礼」
詫びを入れ玄関から外に出る。
その時玄関に向かいながら独り言を漏らした。
「珍しい。杉本君からだ」
今のうちだ。
辺りを見回すが部屋には居る筈の鑑識が居ない。
今がチャンス!!
もう一度辺りを見回す。
・・・誰も居ない。
僕は白い手袋を付けたまま、緑の物を遺体の首から外した。
そしてコートの右ポケットにしまう。
西野課長が電話を終えて戻ってきた。
僕は慌てて遺体の周りを調べるフリをする。
突然名前を呼ばれ、僕の鼓動は通常の二倍になった。
その所為か胸が苦しい。
「どうしたんですか?」
僕は冷静を装う。
正直、目撃されてしまったのかと不安だった。
「杉本君が君に電話したらしいんだが出ないから私に掛かって来たよ。電話、気付かなかったのか?」
「気付かなかったみたいです。すみません」
僕は頭を下げる。
「大した事じゃない。それより杉本君から伝言で、落ち着いたら連絡をくれと言っていたぞ」