黒猫-私の部下-
司が電話?・・・僕の携帯は鳴っていないし、マナーモードにしているわけでもない。
それに電源だって切れていない。
・・・多分、司は気を遣って用も無いのに西野課長に電話したのだろう。
そのお陰で無事、盗む事が出来た。
後で礼を言わないと。
「今、連絡してきても大丈夫だよ?杉本君、急いでいたみたいだっだし」
「そうですか。じゃぁお言葉に甘えて」
僕は西野課長にペコリと頭を下げると、携帯を握り締め、玄関から外に出た。
外の冷たい風に吹かれながら携帯を耳に当てる。
司は直ぐに電話に出た。
「もしもし、司?さっきは助かったよ。盗むタイミングが無くてさ。サンキューな」
辺りを警戒しながら小声で話す。
『翔・・・。どうしよう・・・殺す事が楽しくなってきた・・・・・・』
司は泣いているようで、声が掠れていた。
繰り返し何度も、どうしようと力なく呟いている。
僕はその言葉をただ黙って聞いていた。
・・・イヤ、黙ってたんじゃない。
頭の中が真っ白になって言葉を発する事が出来なかったのだ。
でも何処か僕の頭の中は冷静だった。
司、大丈夫だよ。
僕だって物を盗む事に楽しさを感じているんだ。