黒猫-私の部下-
2月8日
俺は今、銀座にあるバーのカウンター席で1人、グラスに入ったウイスキーをロックで飲んでいる。
ある人物を待ちながら。
ある人物とは2月8日のターゲットの女、珠洲河麗子(スズカワレイコ)。
最近俺は、相手の事をよく観察してから殺したいと思うようになった。
彼女を毎晩のように追跡すると仕事帰りにいつも1人で寄るバーを発見した。
それがココ<Street Bar>
彼女を待つ事30分、漸く珠洲河麗子が姿を現した。
「いつものお願いします」
彼女は注文しながら、俺と2つ離れた左側のカウンター席に座った。
彼女は右耳に髪を掛け、頼んだ琥珀色の液体をちびちびと飲み始めた。
バーの淡いオレンジ色の光を浴びている所為か、彼女がとても綺麗に見える。
俺はそんな彼女を横目で窺う。
すると2人組の男が店に入るなり珠洲河麗子に声をかける。
「ねぇちゃん綺麗だね。一人?」
彼女の右側に立つ男が言う。
「ねぇちゃん、一緒に飲もうよ」
彼女の左側に立つ男が強引にも彼女の細い腕を掴む。
「やめてください。放してッ」
彼女は必死に振り解こうとするが、男の力に勝てるわけがない。
俺はゆっくりと近づき声をかける。
「俺の女に触んな」
男達を睨みつけると、舌打ちをして静かに立ち去った。