黒猫-私の部下-
「・・・か・・・・・・る・・・け・・・お・・・」
遠くから何か聞こえる。
もうここは天国か?
「おぃ・・・・・・かけ・・・る」
誰かが僕の名前を呼んでいる。
意識が徐々に回復し、うっすら目を開ける。
「翔!やっと気が付いたか」
僕を呼んでいたのは西野課長だった。
僕は体を起こし辺りを見回す。
隠し金庫がある部屋だ。
内ポケットには、しっかり宝石が入っている。
「倒れていたんだぞ、大丈夫か?」
「すいません、大丈夫です」
僕は死んでいない。
珠洲河麗子に首を絞められたなんて悪い夢を見ていたのだろう。
でも首が痛むのはどう説明したらよいのだろうか。
「盗みか・・・」
「えっ!?」
西野課長の言葉に声が裏返る。
「被害者は窃盗をしていたんだよ」
「あ・・・あぁ、そうなんですか」
苦笑いをする。
「翔、次の現場行くぞ」
部屋を出る西野課長の背中を追う。
リビングが気になる。
珠洲河麗子は・・・床に倒れていた。
だが彼女の右腕の位置が少し変わっている。
・・・それは気のせいだろうか。