終止符。
何もない部屋ってこんなにも広いんだ…

「うちだけど、うちじゃないみたい」


独り言は部屋と不安に吸い込まれた。


コン、コン、コン

規則的に三回戸を叩く音。

うちのインターホンが壊れている。

来客は皆戸を叩くのだが、叩き方にも性格が表れる。


「長尾です。お迎えに参りました」


時間丁度に長尾はやってきた。



カチャリ… ゴッ


「こんにちは、咲良さん」

「こんにちは…。準備は出来てます。行きましょうか」


家を出て、鍵をかけた。

そしてその鍵を一階の大家さんに返す。

「咲良ちゃん、良かったわね。お父さんの所に行くんでしょ?お母さんの分も幸せにならなきゃ駄目よ。しっかりと、強く生きるのよ!」

「はい。長い間ありがとうございました。大家さんもお元気で…」


最後に大家さんと握手をした。

皺々の、温かい手だった。


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