終止符。
乗り込んだエレベーターの上昇は早く、苦にならない待ち時間だった。

長尾の指がインターホンを押す。

私の頭の中は、ほどけない糸の様に、様々な思考が絡まっていた。

鍵を回す金属音の後に扉が開く。


「やあ、よく来たね」


視界に入ったのは、鋭い目つきとエラの張った顎が威圧的な印象を植え付ける、父の顔だった。

しかし声のトーンや表情は、顔や記憶に似つかわしくなく柔らかい。


私は困惑した。


「さあ、上がりなさい」


そんな私をよそに、父は部屋に招き入れる仕草をした。


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