終止符。
何か…ないのか?

この男にとって不都合な事は…。


ふいに、伯母の電話の内容を思い出した。


(…それで?まだ飯田は見つからないの?弟が居ないうちに話をつけたいのよ)


…これだ。

私は心躍らせながら口を開いた。


「ねぇ、私全部聞いたの。伯母さんがね、電話で話しているの聞いちゃったのよ…」

「…何の話だ?」


鋭い視線が私をさす。


「…見つかったのよ、飯田さんが。もう伯母さんと話はついてるのよ」


嘘を交えて話す。

事の真意は知らないが、これで慌てるはずだ…



「な…何だって、あいつが?ふざけるな!!」


肩がわなわなと震えている。

明らかに動揺し、怒りが込み上げている様子が伝わって来る。


「姉さんが…?大体話がついたってなんなんだ!?」


「想像はつくでしょ?」

「………」


唾を飲み込み、黙り込んだ。

いい調子だわ。

もう一押し。


「私もいい話だと思うわ。賛成よ」


その瞬間、父の顔が変わり果て崩れた。


怒りと悲しみを同居させた、哀れな野良犬の顔。

遠くを見つめた…今まで、決して見た事の無い顔だった。


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